2007年8月13日

新刊のお知らせ

顔のない男・東ドイツ最強スパイの栄光と挫折

ドイツを東西に分断していた壁が崩壊してから17年目にあたる、2006年11月9日の未明。1人の老人がベルリン東部・ニコライ地区の自宅で、ひっそりと息を引き取りました。

マルクス・ヴォルフ、83歳。社会主義時代の東ドイツで、対外諜報機関
HVA情報収集管理本部)を34年間にわたって率い、西側の諜報機関と死闘を演じた、大物スパイです。

ヴォルフは、西ドイツのブラント首相の側近にスパイを送り込んだり、NATO・北大西洋条約機構の最高機密を盗んだりするなどして、西側の諜報機関を震え上がらせました。

ソ連が日本に送り込んだスパイ、ゾルゲと並んで、世界の諜報史上に名を残す人物です。


17年におよぶ取材の結果をまとめて、ルポルタージュを出版します。

本書は、ヴォルフの一生をたどり、東西ドイツが繰り広げたスパイ戦の実態を描くことによって、第二次世界大戦、東西分断、そしてベルリンの壁崩壊から統一という、歴史の荒波にもまれた人々の運命を浮き彫りにしようとするものです。

ヴォルフ自身に対するインタビューだけでなく、彼の部下やシュタージ(国家保安省)に弾圧された人々に対する取材の内容も盛り込まれており、今は消えてしまった社会主義国東ドイツの雰囲気も伝える本です。

歴史やインテリジェンスに関心のある人には、お勧めの一冊です。

(新潮社から
825日発売予定)